夫婦片方の配偶者が借りた借金を、もう片方の配偶者が代わりに返済する義務はありません。結婚しているからと言って、そこまで責任を共有することはありません。

夫婦と言えども、共に生活していくにはお金が足りなくなり、借金するケースは、人生の中で幾度となくあるでしょう。その借金が問題となり、様々な問題になり専門家に相談される場合が、かなりの数あるようです。「金の切れ目が縁の切れ目」と昔の人は言っています。

しかし、夫や妻が借金する時に、配偶者の同意を得て保証人や連帯保証人を立てた場合は、夫婦関係であっても返済する義務は発生することになります。これは、親や兄弟でも同じことが言えます。

配偶者が保証人となっている場合は、もし借金の返済を促された時は、本当に借金された本人が返済できいるのではないのかと問うことが出来ます。

もし、借金した夫に返済能力があることが分かれば、保証人である妻には返済する必要はありません。

しかし、妻が夫の連帯保証人となっている場合は、夫に十分な返済能力があるにも関わらず、債権者が連帯保証人の妻に請求をいきなりしてきたとしても、妻が返済しなければいけません。

連帯保証人に限らず、保証人であっても返済する必要が発生する可能性もあるので、夫婦で力を合わせて頑張るというのであれば良いのですが、関係が悪くなることもあるので、なるべく夫婦でも保証人にならないほうが良いと思います。

無断で保証人にされた時の返済義務

夫がギャンブルや豪遊するために、手持ちの金では事足りず、妻の名前を代筆しハンコを借りて、妻を無断で保証人にした場合、妻には夫が借りた借金を返済する義務はありません。

妻には、保証人になる意思はまったくありませんので、夫がした行為は「無権代理行為」になります。

現在では、法律や金融機関のガイドラインも整備されているので、保証人や連帯保証人に対して、契約前と契約後には保証内容についての書面を交付しなければならないと「貸金業法 第16条の2、第17条」に記されています。

貸金業者でない銀行や信用金庫などの金融機関でも、書面の交付はされますが、金融庁のガイドラインとして、行員の目の前で署名捺印することが決められています。

夫婦の借金に返済義務が生じる場合

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

引用:民法 第761条「日常の家事に関する債務の連帯責任」

夫婦では返済義務が生じないことになっていますが、上の引用の民法では例外として、夫婦であっても返済義務が生じるように場合があると定められています。

日常の家事と言うのは、夫婦ですから共同生活する事が普通です。この日常の家事について必要になったお金を借金した場合、片方の配偶者にも返済義務があるということです。

  • 電気、ガス、水道などの公共料金
  • 生活必需品の購入代金
  • 家賃などの居住費
  • 医療費
  • 教育費

日常の家事債務というのは、上で挙げた以外にも多くありますが、夫婦が共同生活していると必要になるお金全般だと考えて良いです。

共に夫婦が生活して、給料が思うように増えないなど、様々な理由があるでしょう。生活費の管理をするのは多くの場合、専業主婦やパートなどをされている女性の方が多いと思います。

夫には言えず黙って借金する方も多いようで、のちのちバレることで大変な事になるケースが多いです。

共存生活でのお金ですので、その場合はしっかり打ち明けて借金をされる方が、あとで返済していくことも楽になるでしょう。

返済義務がないのに1円でも払うと義務が生じる

男性には失礼かもしれませんが、夫がギャンブルや女遊びで連帯保証人を、妻に無断にしていた場合に、債権者から返済が求められることになります。

この時に、少しでも払ってくれと言われて、その場しのぎで1円でも返済に応じてしまうと、妻に返済義務が生じることになります。

上で紹介しました「無権代理行為」で保証人とされた場合は、保証契約をしていないという意思確認をすることで、夫の借金の返済をしなくても良いと書きました。

1円でも妻が保証してしまうと、「追認」と言われる過去の事柄について認めてしまうことになり、保証していかなければならなくなります。

妻に限らず、見に覚えのない借金の請求に応じてしまうと、その後の返済をしなければいけない立場になってしまうので、注意する必要があります。

専業主婦はカードローン利用できるの?

夫に黙って、専業主婦の方が貸金業者や銀行カードローンを借りたことで、多重債務に陥ってしまったという内容が、以前に問題にもなっていました。

しかし、現在では貸金業者で専業主婦のような年収ゼロの方が、カードローンを申し込めないように「総量規制」があります。

さらに、総量規制の例外として「配偶者貸付」で専業主婦でも、貸金業者で借りることは出来ますが、夫の同意書の提出が必要なので、夫に黙って消費者金融などを申し込むことは出来ません。

銀行は貸金業者ではありませんので、銀行カードローンは専業主婦でも申し込めるようになっています。しかし、2018年以降は専業主婦への貸付も厳しくなっているので、なかなか審査に通ることは難しいと言えます。

家計が苦しい場合に、すぐに借入を考えるのではなく、パートをすることで自分に収入が入ることになります。

主婦に収入がある場合に、もしお金を借りなければいけない状態になった場合は、消費者金融でも銀行カードローンでも申し込めるようになります。

まずは、夫婦共に安定した収入が入るように考える事が先決となるでしょう。