母子父子寡婦福祉資金の審査は厳しいの?

母子父子寡婦福祉資金貸付金ぼしふしかふふくししきんかしつけきん」って名前を聞いたことがあります?読み方が分かりにくいので、上にふりがなを振っています。

どうしても避けられない理由で、配偶者と離婚してしまったシングルマザーやシングルファーザーの世帯は、多くが収入に対しての悩みを抱えています。

一人親の世帯の中でも女性が子どもを育てている世帯は収入面で不利な場合が多く、家庭の貧困率が高くなっているのが一般的です。

母子家庭の貧困率は6割ぐらいと発表されているところもあれば、8割近くが「生活苦」と答えている母子家庭世帯があると発表しているところもあります。

離婚後の生活苦を抱えている世帯で、新たな事業開始や仕事の技術取得をするのは費用が無く、新たな人生を諦めてしまうシングルマザーも多いです。

母親のためだけでなく子どものためにも「母子父子寡婦福祉資金貸付金」を利用すれば、生活苦から抜け出せるお金を融資してもらえるので、詳しく解説します。

母子父子寡婦福祉資金とは?

先ほども書いたように、シングルマザーなどの一人親世帯は子育てもしなければいけないので、なかなか長時間の仕事に就きにくい面があるので、収入が低くなりやすいです。

そんな生活が困窮している世帯に対して低金利で貸し付けをしてくれるのが「母子父子寡婦福祉資金」です。

消費者金融の金利は利息制限法の範囲内で運営され、上限金利ギリギリが多く「年18.0%~20.0%」が一般的です。一方、母子父子寡婦福祉資金は「年1.0%」や「無利子」で借りられるので利息はかなり抑えられます。

返済期間も長く生活費への悪影響が出にくい範囲で返済計画が立てやすいメリットがあります。

母子父子寡婦福祉資金貸付金は、ひとり家庭の父母等が、就労や児童の就学などで資金が必要となったときに、都道府県、指定都市又は中核市から貸付けを受けられる資金で、ひとり家庭の父母の経済的自立を支援するとともに生活意欲を促進し、その扶養している児童の福祉を増進することを目的としています。
返済時の負担軽減のため、貸付利率については、無利子とします。
償還期限は、資金の種類により、3年間から20年間までとなっています。
さらに、貸付条件の見直しにより連帯保証人要件が緩和され、連帯保証人の確保が困難な母子家庭の実情を考慮し、連帯保証人のない場合も貸付を認められます。(ただし、その場合は有利子貸付(1.5%)とする。)

母子父子寡婦福祉資金は厚生労働省が管轄していますが、実際に相談する時の窓口は市区町村役場の福祉課になります。

母子父子寡婦福祉資金の貸付対象になる条件

貸付制度の名前を見ても分かると思いますが、次のような世帯や人が貸付対象になっています。

貸付対象
  • 20歳未満の児童を扶養している母子(父子)家庭の母(父)
  • 母子家庭の母や父子家庭の父に扶養されている児童
  • 寡婦かふ
  • 寡婦に扶養されている子
  • 40歳以上の配偶者のいない女性(未婚は除く)で、子を扶養していない

貸付条件細かく分かれ自治体によって多少条件が異なることがあるので、確認は是非取るようにしてください。

「母子家庭の母」や「父子家庭の父」とは?

母子父子寡婦福祉資金の貸付対象で最も分かりやすいのが「母子家庭」「父子家庭」ですが、母子父子家庭は法律によって内容が決められています。

一 離婚した女子であつて現に婚姻をしていないもの
二 配偶者の生死が明らかでない女子(男子)
三 配偶者から遺棄されている女子(男子)
四 配偶者が海外にあるためその扶養を受けることができない女子(男子)
五 配偶者が精神又は身体の障害により長期にわたつて労働能力を失つている女子(男子)
六 前各号に掲げる者に準ずる女子(男子)であつて政令で定めるもの

法律で見ると難しくなりますが、簡単に言うと「死別や離婚などで配偶者が現在いない20歳未満の子供を養っている父や母」です。

あと、婚姻関係を結ばずに未婚で子どもを授かり離別した家庭も母子家庭や父子家庭になります。

寡婦って何?

貸付条件の中の「寡婦かふ」とは何なのか分からない人もいると思います。

寡婦も母子及び父子並びに寡婦福祉法 第6条の4項に書かれていますが、以前は母子家庭の母で現在は児童を扶養していない女性のことを言います。

例えば児童が成人して親元を離れた場合などが該当するケースです。

母子父子寡婦福祉資金の審査は厳しいの?

貸付条件に合っている母子家庭や父子家庭であっても審査に必ず通るわけではありません。給付ではなく貸付なので必ず返済するので、返済能力があるか審査が行われます。

消費者金融などは営利目的なのでなるべく返済能力がある申込者は審査に通す傾向にありますが、母子父子寡婦福祉資金は営利目的ではありませんので審査に対しては厳しいです。

ですが、困った家庭を助けたい気持ちは非常に高いので、返済計画などを十分相談することで審査に通る可能性はあります。

では、どんな人が審査に通りにくい家庭や人なのか、次のリストに挙げて解説します。

審査に落ちやすい人の特徴
  • 収入が十分にある人
  • 無収入や限りなく低収入の人
  • 生活保護を受けている人
  • 多重債務者や自己破産をした人
  • 返済の意思が非常に低い人

収入が十分ある人

ハテナ

十分収入があれば返済能力も高いし、審査に通るのでは?


確かに返済能力が高いのは収入があることですが、母子父子寡婦福祉資金の目的である「母子家庭などの経済的自立や生活意欲を手助けして成長させる」とは違ってしまいます。

十分返済能力があれば民間金融機関で目的のローン商品を借りて返済すれば良いという判断になるので、審査に落とされてしまいます。

教育ローン検討中の家庭で十分収入があるのに生活が苦しいのであれば、「国の教育ローン」を検討するのも良いかもしれません。世帯収入の上限が比較的高いのでおすすめです。

十分収入があれば収支をしっかり見直せば、生活苦から抜け出せる場合もあります。

無収入や限りなく低収入の人

上でも書いたように母子父子寡婦福祉資金は貸付なので、返済できる人でないと審査に通りません。

無職で収入が無い人は返済能力ゼロなので審査には通らないのは当たり前です。低収入すぎる人も同じ理由で返済能力が足りないと判断されます。

現在の収入状況の書類は必ず提出するので、ウソをつくのは無理です。収入状況を担当者が見てあまりにも生活苦であれば、違い制度の生活保護の検討するように勧められる可能性はあります。

生活保護を受けている人

生活保護を受けている人は生活に困窮して、それでも最低限の生活が出来るように国から給付金を受け取っている状態です。

母子父子寡婦福祉資金の貸付条件に「返済能力がある人」という条件がありますが、国から給付を受けているお金で返済をするのは矛盾になってしまいます。

生活保護受給者の申込は断っていませんが、審査に通るのはなかなか難しいです。

逆に母子父子寡婦福祉資金を借りた後に生活が困窮してしまい、生活保護を申請して受け取ることは可能になっています。

多重債務者や自己破産をした人

数多くの金融機関から借金をして多重債務者になってしまい生活苦に陥ってしまう人は多いですが、多重債務の借り換え目的で母子父子寡婦福祉資金は利用できません。

多重債務=返済能力もない」と審査で判断され落とされる可能性が非常に高いです。

自己破産された人も同様に返済能力がなく信用情報も非常に悪い状態なので、審査に通るのは難しいでしょう。

返済の意思が非常に低い人

母子父子寡婦福祉資金を申し込む時には面談があり、非常に悪い態度であったり返済計画が進まないなどがあれば、返済意志の低さから融資が行えないと判断されることもあります。

母子父子寡婦福祉資金が認めている目的と対象になる家庭とは?

母子父子寡婦福祉資金の使い道は非常に多く、次の12種類が目的によって用意されています。

母子父子寡婦福祉資金の種類
貸付対象目的
事業開始資金
  • 母子家庭の母
  • 母子家庭の父
  • 母子・父子福祉団体
  • 寡婦
事業を開始するのに必要な設備。什器、機械等の購入資金
事業継続資金
  • 母子家庭の母
  • 母子家庭の父
  • 母子・父子福祉団体
  • 寡婦
現在営んでいる事業を継続するために必要な運転資金
修学資金
  • 母子家庭の母が扶養する児童
  • 父子家庭の父が扶養する児童
  • 父母のいない児童
  • 寡婦が扶養する子
児童や子を就学させるための授業料や交通費などの必要資金
技術取得資金
  • 母子家庭の母
  • 母子家庭の父
  • 寡婦
自ら事業開始や就職するために必要な知識技術習得する必要な資金
修業資金
  • 母子家庭の母が扶養する児童
  • 父子家庭の父が扶養する児童
  • 父母のいない児童
  • 寡婦が扶養する子
事業開始や就職するために必要な知識技能習得する必要な資金
就職支度資金
  • 母子家庭の母が扶養する児童
  • 父子家庭の父が扶養する児童
  • 父母のいない児童
  • 寡婦
就職に必要な服や靴、通勤自転車などを購入する資金
医療介護資金
  • 母子家庭の母または児童※
  • 父子家庭の父または児童※
  • 寡婦

※介護の場合は児童を除く

医療や介護を受けるために必要な資金
生活資金
  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父または児童
  • 寡婦
生活を安定継続するために必要な生活補給資金
住宅資金
  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦
住宅の建設購入や補修保全、改築、増築するのに必要な資金
転宅資金
  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦
住宅移転するための貸借に必要な資金
就学支度資金
  • 母子家庭の母が扶養する児童
  • 父子家庭の父が扶養する児童
  • 父母がいない児童
  • 寡婦が扶養する子
就学や修業に必要な服や靴などを購入する資金
結婚資金
  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦
扶養する児童や子が婚姻する時に必要な資金

児童が使うお金から父母が使うお金と多岐に渡っており、使い道の目的によって貸付対象の世帯に違いがあります。

特例児童扶養資金が以前はありましたが現在は廃止されています。ですが、令和元年11月1日~令和2年1月31日まで「臨時児童扶養資金」が創設されています。

目的によって貸付される金額と据置期間の違い

融資を受ける目的の違いで、融資される金額と返済を待ってもらえる「据置期間」に違いがあります。自治体の違いでも大きく変わるので、東京と大阪の母子父子寡婦福祉資金の違いを合わせて次の表にまとめました。

上限の貸付金額と据置期間
貸付金額と据置期間
修業資金
  • 月68,000円
  • 習得期間満了後1年間
生活資金
  • 月105,000円
  • 満了後6ヶ月
住宅資金
  • 150万円
  • 貸付日から6ヶ月
転宅資金
  • 26万円
  • 貸付日から6ヶ月
結婚資金
  • 30万円
  • 貸付日から6ヶ月
就学資金
  • 小学校:63,100円
  • 中学校:79,500円
  • 中学卒業後6ヶ月
  • 公立高校16万円
  • 私立高校42万円
  • 国立大学38万円
  • 私立大学59万円
  • 貸付の修学終了後6ヶ月
事業開始資金
  • 287万円
  • 貸付日から1年間

貸付金額の上限は決められているので、生活環境に応じて貸し付けされる金額は変わり、さらに自治体によって多少上限金額に違いがあります。

返済開始までの期日も貸付日や卒業後6ヶ月~1年間と余裕があるので、返済しやすい環境が整っています。

連帯保証人を付けて母子父子寡婦福祉資金を利用すれば無利子になるの?

母子父子寡婦福祉資金の「修学資金」「修業資金」「就職支度資金」で親が貸付を行う場合は、児童を連帯借受人にすれば連帯保証人を付けなくても無利子で借りられます。

他の貸付制度で借りる場合でも連帯保証人を付ければ同じように無利子で借りられます。もし連帯保証人が立てられなくても「年1.0%」の非常に低い金利で借りられるメリットはあります。

連帯保証人になるための条件がある

連帯保証人の条件
  • 申請者と別生計
  • 同県内や近隣で住んでいる親族
  • 保証能力がある

連帯保証人として認めてもらうためには、上の内容に当てはまる人が主な条件になります。近隣に住んでいる親族で年齢60歳未満で万が一の時には保証能力があると条件は厳しくなっています。

母子父子寡婦福祉資金の申込の流れ~どこで申請すれば良いのか?

行政に関する申請はどこで受け付けているのは分からない場合が多いですが、母子父子寡婦福祉資金は厚生労働省の所管ですが、相談や申込する場所は地方自治体の福祉事務所や役場の福祉担当窓口などになっています。

住んでいる市役所や区役所に電話で問い合わせすると、どこで申し込むのか担当者が教えてくれます。

実際に相談してから融資を受けるまでの流れを見てみましょう。

  1. STEP1
    相談
    福祉担当窓口で担当者と相談から始め、相談を受ける必要事項を記入して渡す。生活環境や収入支出の状況、連帯保証人の有無や希望額などを相談する。
  2. STEP2
    必要書類の準備
    必要書類は非常に多く、事前にある程度把握している方が良いので、後で詳しく解説します。申請書は窓口に置いているのでその場で準備をします。
  3. STEP3
    申請
    ネット申込はないので、窓口に出向き必要書類の提出をして不備が無ければ受理されます。
  4. STEP4
    審査
    受理をした書類で審査が行われます。審査には2週間~1ヶ月は必要なので時間がかかります。
  5. STEP5
    貸付決定
    審査に通れば「貸付決定」の通知書は自宅へ郵送されます。不可の場合も同じく郵送で知らされます。借主と連帯保証人が自筆した「借用証書」と「印鑑登録書」「貸付金交付請求書」等を窓口に提出し、それまでに「償還用口座の振替納入依頼書」を金融機関窓口で口座振替の手続きを行います。
  6. STEP6
    連帯保証人の意思確認
    STEP5と同時に、連帯保証人を付けた貸付制度であれば、担当者が直接連帯保証人と面談して意思確認を行います。
  7. FINAL STEP
    貸付金の交付
    指定した口座に決まった金額が振り込まれることになります。

申請時に必要になる書類

消費者金融では本人確認書類だけで申込できますが、母子父子寡婦福祉資金では次のリストに挙げた書類が必要になります。

必要書類
  • 貸付申請書
  • 申請者及び申請者と生計をともにしている者及び連帯保証人の給与証明書(源泉徴収の写でも可)
  • 連帯保証人の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 連帯保証人及び連帯借主の誓約書
  • 貸付申請者調書
  • 申請者、連帯借主及び連帯保証人の住民票謄本
  • 他の借入金に関する申立書
  • その他、資金に応じ必要な書類(在学証明書、経営診断書など)

上のリストは兵庫県の母子父子寡婦福祉資金貸付金を申し込みされる場合の書類です。

連帯保証人になる人も書類を集まるので、必要になる資金の内容によって用意する書類も変わり、事前に福祉課の窓口で書類の確認をされた方が良いです。

母子父子寡婦福祉資金の貸付金の返済について

母子父子寡婦福祉資金の返済は非常に簡単で、指定した口座振替の口座から返済計画に基づいた返済日に自動的に引き落としされます。据置期間があれば期間中は返済は行いません。

返済方式は「元利均等方式(払い)」なので、毎月や決まった返済日に一定額を返済するので返済額を迷うことはありませんので、返済期日には入金するのを忘れないようにしましょう。

滞納があれば違約金が取られるの?

母子父子寡婦福祉資金の口座振替で残高が足りない状態になり滞納してしまうと、違約金をプラスして支払う必要があります。

違約金の金利は「年5.0%」なので連帯保証人を付けて無利子で借りていた家庭には、非常に厳しい金利だと思います。平成27年3月31日までは「年10.75%」の金利なので違約金の発生は少なくなりましたが、非常に勿体ないので返済が遅れないようにしましょう。

それでも滞納をし続けてしまうと、電話や郵送で督促を受けたり、自宅訪問の返済の督促も合わせて行われます。連帯保証人がいれば同じように督促を受けてしまうので、かなり迷惑をかけてしまうことになります。

最終的には法定措置が行われてしまうので注意してください。

違約金の免除は出来ないの?

「違約金は払いたくない」と思うはずですが、違約金の免除は一部で認められています。

しかし、簡単に違約金免除が出来るわけではなく、災害ややむを得ない返済できない事情があった場合に限り免除の申請が出来るようになります。

免除を申請する場合は「母子父子寡婦福祉資金違約金徴収免除申請書」を記入して、返済できない理由の証明できる書類も併せて提出します。

急いで借りたい人は即日融資ができる消費者金融も検討する

母子父子寡婦福祉資金で借りる場合、必要書類の提出からも分かるように、融資を受けるまでの期間は非常に長くなってしまい、約1ヶ月程度必要になってしまいます。

なるべく数日で借り入れされたい場合には難しい貸付制度ですので、早く借入を希望する場合に消費者金融や銀行カードローンを選択されることになります。

プロミスやアコムなどの消費者金融であれば審査時間は最短30分ですので、すぐに資金を用意するのには良いと思います。みずほ銀行カードローンや三井住友銀行カードローンでも審査に通れば、数日で借りることも出来るようになっています。金利面では負けてしまいますが、融資の早さではカードローンの方が良いです。